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2026.3.7DXコラム

テレワークなのにハンコのために出社 — 承認フローのDX化

「ハンコもらうために出社します」という矛盾

テレワークが広がった今でも、こんな声を聞くことがあります。

「在宅勤務なんですけど、部長の押印が必要なので午後から出社します。」

往復の通勤時間は2時間。ハンコを押してもらう時間は30秒。書類を総務に届けて5分。合計2時間35分のうち、本当に必要だった時間はわずか数分です。

宮城県内の中小企業でも、テレワークやハイブリッド勤務を取り入れる会社が増えてきました。しかし、承認フローだけが紙とハンコのまま残っている、というケースは非常に多いのが現状です。

紙とハンコの承認フローが抱える問題

1. 承認待ちで業務が止まる

紙の稟議書は、物理的に承認者の手元に届かなければ先に進みません。承認者が出張中、外回り中、あるいは単に席を外しているだけで、書類は机の上に放置されます。

ある建設業のお客様では、資材の発注承認に平均5営業日かかっていました。承認者が3人いて、全員のハンコが揃うまで待つ必要があったからです。その間に資材価格が変わってしまい、見積もりを取り直すこともあったそうです。

2. 書類の紛失・差し戻し

紙の書類は紛失のリスクがあります。「あの申請書、どこにいった?」と探し回る時間は、誰にとっても無駄でしかありません。また、記入漏れや金額ミスがあった場合は差し戻しになり、また最初からやり直しです。

3. 記録が残りにくい

紙の承認書類は、ファイリングして棚に保管するのが一般的です。しかし「去年の10月に承認した備品購入の稟議書」を探し出すのに、何分かかるでしょうか。監査対応や過去の意思決定の振り返りにも、紙ベースの記録は不便です。

「でもハンコには法的効力があるのでは?」という誤解

よくある質問です。結論から言えば、日本の法律上、契約や承認にハンコは必須ではありません。

2020年に内閣府・法務省・経済産業省が連名で公表した見解でも、「契約書に押印がなくても法的効力に影響はない」と明記されています。社内の承認フローであればなおさら、ハンコの有無が法的問題になることはまずありません。

もちろん、取引先との契約書など対外的な書類については、相手方の意向もあるため一概には言えません。ただし、社内の経費精算や稟議承認から始めるのであれば、法的なハードルはほぼゼロです。

解決策1: ワークフローツールを導入する

社内の承認フローをデジタル化するワークフローツールは、無料〜低コストで使えるものが多数あります。

  • ジョブカンワークフロー: 月額300円/ユーザーから。中小企業向けで導入しやすい
  • kintone: サイボウズ製。ワークフロー以外にもデータベースとして活用可能
  • Google Forms + Google Apps Script: 無料。シンプルな承認フローならこれで十分
  • Microsoft Power Automate: Microsoft 365ユーザーなら追加費用なしで利用可能

これらのツールを使えば、スマートフォンから申請・承認ができるようになります。出張先でも移動中でも、通知が来たら数タップで承認完了です。

解決策2: 電子署名を活用する

取引先との契約書にも対応したい場合は、電子署名サービスの導入が有効です。

  • クラウドサイン: 国内シェアNo.1の電子契約サービス。無料プランあり
  • DocuSign: グローバル対応。海外取引がある企業向け
  • GMOサイン: 月額固定で署名数無制限のプランあり

電子署名を使えば、契約書の送付から署名、保管まですべてオンラインで完結します。印刷、郵送、返送待ちの時間がなくなり、契約締結までのリードタイムが大幅に短縮されます。

解決策3: 段階的に移行する

いきなり全ての承認フローを電子化しようとすると、現場の抵抗が大きくなりがちです。以下の順番で進めるのがおすすめです。

  • ステップ1: 社内の経費精算・備品購入申請など、リスクが低いものから電子化
  • ステップ2: 稟議書・休暇申請など、承認者が複数いるフローを電子化
  • ステップ3: 取引先との契約書を電子署名に移行(相手の同意を得ながら)

ステップ1だけでも、月に数十枚の紙と数時間の移動時間を削減できます。効果を実感してから次のステップに進めば、社内の理解も得やすくなります。

まとめ: ハンコ文化を責めるのではなく、選択肢を増やす

紙とハンコの文化を全否定する必要はありません。大切なのは「ハンコのためだけに出社する」という非効率をなくすことです。

デジタルで済むものはデジタルで。紙が必要なものは紙で。選択肢を増やすことが、働きやすい環境づくりの第一歩です。まずは社内の承認フローを1つだけ電子化してみるところから始めてみてください。