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2026.3.7DXコラム

同じデータを3つのシステムに手入力 — 転記ミスが月10件発生する現場

「また転記ミスです」— 毎月繰り返される報告

受注が入ったら、まず販売管理システムに入力する。次に、同じ情報をExcelの在庫管理表にも入力する。さらに、請求書作成のために会計ソフトにも同じデータを入力する。

1件の受注に対して、3つのシステムに同じ情報を手入力。100件の受注があれば、300回の入力作業が発生します。

これだけ入力回数が多ければ、ミスが起こるのは当然です。数字の打ち間違い、コピー漏れ、入力先の間違い。月に10件程度の転記ミスが発生している現場は、決して珍しくありません。

転記作業が引き起こす4つの問題

1. ミスによるコスト発生

転記ミスは直接的なコストにつながります。請求金額の間違い、出荷数量のズレ、顧客情報の入力漏れ——修正対応、お詫びの連絡、再発行の手間。1件のミスを修正するのに平均30分かかるとすれば、月10件で約5時間。年間で60時間が転記ミスの修正だけに消えている計算です。

2. 膨大な作業時間

転記そのものにかかる時間も見過ごせません。1件あたり3つのシステムに入力するのに15分かかるとして、月100件で25時間。これは約3営業日分に相当します。毎月3日間、誰かが「ただデータを写す」だけの作業に費やしているのです。

3. データの不整合

3つのシステムに別々に入力しているため、あるシステムでは修正済みなのに別のシステムでは旧データのまま、という不整合が生まれます。「販売管理と在庫管理で数字が合わない」「会計ソフトの売上と販売管理の売上が一致しない」——月末の締め作業で差異の原因を追いかける時間は、さらに数時間に及びます。

4. 社員のモチベーション低下

同じデータを何度も入力する作業は、やりがいを感じにくいものです。「この作業、意味あるのかな」と感じながらも、仕組みがないから続けるしかない。こうした小さな不満が積み重なって、離職につながるケースもあります。

なぜ転記作業がなくならないのか

多くの場合、それぞれのシステムが別の時期に、別の目的で導入されたことが原因です。

  • 販売管理システムは10年前に導入
  • 在庫管理はExcelで自作
  • 会計ソフトは税理士の指定で使っている

システム同士が連携していないため、間に人間が入って「橋渡し」をしている状態です。それぞれのシステムを入れ替えるのは大がかりすぎるし、今のやり方で一応回っている。だから放置されてきた——というのが本音ではないでしょうか。

解決策1: API連携でシステムをつなぐ

多くのクラウドサービスやソフトウェアは、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)という仕組みで外部システムとデータをやり取りできるようになっています。

例えば、販売管理システムに受注データを入力したら、自動的に在庫管理表と会計ソフトにもデータが反映される。こうした連携をAPIで構築すれば、転記作業はゼロになります。

  • 入力は1回だけ。あとは自動で他のシステムに反映
  • 人間が介在しないため、転記ミスが原理的に発生しない
  • データはリアルタイムで同期されるため、不整合も起きない

解決策2: 中間にハブとなるツールを置く

すべてのシステムが直接API連携できるとは限りません。古いシステムやExcelベースの管理表など、APIを持たないケースもあります。

そんなときは、Zapier、Make(旧Integromat)、Google Apps Scriptといった連携ツールを「ハブ」として使う方法が有効です。

  • システムAにデータが入力されたらトリガー発動
  • ハブツールがデータを取得し、必要なフォーマットに変換
  • システムB・Cに自動で投入

このアプローチなら、既存のシステムを入れ替えることなく、間の転記作業だけを自動化できます。

解決策3: まずは1つの転記作業から自動化する

いきなり全ての転記作業を自動化しようとすると、コストも時間もかかります。効果的なのは、最もミスが多い、または最も時間がかかっている転記作業を1つ選んで、そこから着手することです。

  • 月に何件のミスが発生しているか
  • 1件あたり何分かかっているか
  • ミスが起きたときの影響度はどの程度か

この3つの観点でスコアをつけて、最もスコアが高いものから自動化する。小さく始めて効果を確認し、成功体験をもとに範囲を広げていくのが、失敗しないDX導入のセオリーです。

まとめ: 人間がやるべきは「判断」であって「転記」ではない

データを正確に転記する作業は、機械が最も得意とする仕事です。逆に、人間が得意なのは「このデータをどう解釈するか」「次にどんなアクションを取るか」という判断です。

転記作業を自動化すれば、空いた時間を本来の業務——顧客対応、商品企画、営業活動——に充てることができます。月25時間の転記作業がなくなれば、それは3営業日分の「攻めの時間」が生まれるということです。